[さいごのかぎ]Townmemoryの研究ノート

創作物から得た着想を書き留めておくノートです。現在はTYPE-MOONを集中的に取り上げています。以前はうみねこのなく頃にを研究していました。

グランドマスターキーの発見・もう謎なんてない

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■うみねこのなく頃に もくじ■


 Ep4当時に執筆されました]

     ☆

 このブログにお越しのみなさん、こんにちは。

「うみねこ」公式掲示板のリンクから飛んで来られたのでしょうか。
 それとも、検索サイトから飛んで来られたのでしょうか。

 どちらにしても、嬉しいです。

 推理の本論については、下の方に「目次」がありますから、そこから順繰りに読んでいただけると、わかりやすいようになっています。

(注:迷い込んだ方へ。このブログは、とてもとても難しい推理ゲーム「うみねこのなく頃に」に関する推理をまとめた場所です。おもしろいですから、興味があったら、ここを読むのをやめて、あそんでみて下さい)

 さて。
 せっかく来て下さったのに、掲示板の書き込みと同じものがあるだけというのは、バリューがないですね。
 なので、この書き込みは、ブログに来て下さった人だけの特別版です。

「うみねこのなく頃に」のゲーム内に登場する、
 すべての密室殺人、犯人不明殺人の解き方をお教えします。

 解き方なんてあるの?

 あります。
 すべての殺人事件は、たったひとつのトリックで行われていた、と考えるのです。
 そして、全エピソードの全殺人を、たったひとつの鍵で開けます。

 密室も南條殺しも夏妃殺しも、同じトリックなので、同じ鍵で開きます。


 みなさん、どうやったらep2の南條を殺せるのか、誰だったら可能なのか、必死で考えたでしょう?
 私も考えました。
 そして結論しました。
 ゲーム内で与えられた条件では、不可能です。

 まず、これを認めること。
 これを認めるのは、敗北に思えるかもしれませんが、違います。
 この事実を認めることが勇気であり、攻撃なのです。魔女はこの勇気を恐れます。魔女は「どうせそんな勇気、持っていないだろう」とあざわらっています。

 まず認める。
 ここからが発想なのです。
 では、最低、どんな条件があったら、南條を殺せるだろうか、と考えるのです。
 南條の事件にかぎりません。ep1の絵羽夫妻殺人の密室。6連鎖殺人。朱志香の部屋。いったい何が、不可能に見せているのだろう。何があったら、可能だったろう。

 合い鍵?
 いいセンです。
 でも、「マスターキーは5本しかない」って赤字で言われちゃっています。
 それに、「誰が」という問題が残ってる。全員にアリバイがあるじゃないか。

 そこで。
 以下の2点の条件がもし揃ったら、全部の殺人が可能じゃないでしょうか。
 すなわち。

●「赤字には真実でないものが含まれている」
●「アリバイが幻想シーンで作り出されている」


 南條殺しを不可能にしているのは、死体状況ではありません。
「赤字」です。
 赤字が、「死亡者はまちがいなく死亡している」「生存者には殺害は不可能だった」と言うから、不可能になっているのです。

 密室は、隠し扉でも、鍵を通すスキマでも、いくらでも疑えます。
 それを疑えなくしているのは「赤字」です。
「スキマや隠し扉はない」と赤字が言うから、疑えなくなっているのです。

 つまり、密室を密室にしているのは、ドアの鍵などではありません。
 赤字なのです。
 ドアに鍵がかかっているから入れないのではありません。
 我々の思考に、「赤字」というロックがかかっているから入れないのです。

 では、結論はもう出ているではないですか。

●「赤字を信じない」
●「幻想で上書きされているから、アリバイを信じない」


 これで、すべての殺人が可能になりました。もう謎はありません。


 えーっ、ていう声が聞こえてきそうですね。
 自分は、ベアトを信じたいとか。
 ルールだから守られるはずだろうとか。
 それは、各人の自由です。
 鍵を使わずにドアを開けて中に入りたい、という希望を持って、努力するのは自由です。
 でも、私は鍵を使ってガチャッっと鍵を開けて入ります。だって鍵持ってるし。


 そう、鍵です。
「赤字を信じるか・信じないか」という論点になると、それは信念の問題になってしまい、実証不可能です。赤字がほんとかうそかは、誰にも確かめられない。
 赤字が真実か、真実でないかを知っているのはベアトリーチェだけです。
 つまり証拠はベアトリーチェの頭の中にしかない。
 ところが我々は、ベアトリーチェの頭を切り開いて中身を確かめることはできない。つまり証拠は、彼女の頭脳という「密室」の中に閉じこめられているのです。

 密室?

 ということは、「シュレディンガーの猫箱」ということ。

「赤字が真実か、真実でないか」。その答えは、密室の中に厳重に隠されていて、観測ができない。
 どっちかわからない。
 なら両方の可能性が、並列に、ならんで存在できるということ。
 ということは、どっちか好きな方を取ればよい。
 その権利がある。

「何が起こったのかわからない」という六軒島の密室状況の中で、
「魔法で殺人が行われた」という説と、
「人間の犯人が殺した」という説と、
 両方が同時に主張できて、どっちが間違いとは決められないということ。
 戦人は、「人間犯行説」を、「信念」だけに基づいて信じて良いということ。

 じゃあ、「赤字は真実とは限らない」を、信念に基づいて信じたら良いじゃないですか。

 でも、これだけでは、戦人とベアトがやっていることと同じで、水掛け論になってしまいますから、「赤字は真実とは限らない」ことを、ベアトに認めさせることにしましょう。
 その方法があります。
 カンタンです。
 みんな、うすうす気付いているでしょう?
 気付いていて、「それはやだなあ」と思って、みずから封印しているだけでしょう。

 その方法とは。
「赤字で語られることは、真実とは限らない」と、青字で言えばよい。

 ゲームのルールにより、ベアトリーチェは、戦人が青字で言ったことを否定できなかった場合、敗北になります。
 そこでベアトリーチェは、
「赤にて語ることは真実」
 と、赤字で言うでしょう。

 ところが、その赤字が真実かどうかが問われているわけです。
 つまり、赤字で「赤は真実」と言ったとしても、「赤字は必ずしも真実ではない」を否定したことにならない。
「赤字は真実」と赤字で言ったら、その赤字を真実であると証明しないかぎり、「赤は真実」にはならないからです。
 赤字は真実だと証明しない限り赤字は真実だと証明できない。
 つまり青字を切れない。
 青字を切れなかったら敗北です。

 そこでたとえば、「妾が緑字で語ったことは真実。そして赤字は真実」と緑字で言ったとしましょう。
 戦人は青字で「緑字は必ずしも真実ではない」と言う。
 すると今度はベアトは、緑字を真実だと証明しないかぎり緑字を真実だと証明できず、緑字が保証した赤字を真実だと証明できないことになります。

 つまり、戦人の「無限後退」を阻止するための赤字であったのに、当のベアトが無限後退をさせられてしまう。そういう状況が発生するのです。
 そして、ベアトリーチェが、ショッキングピンクだのペールイエローだの、思いつくかぎりの色の名前を挙げて、思いつかなくなったころ、戦人はこう言えば良い。

「ベアトリーチェが真実を保証する言葉は、必ずしも真実ではない」

 これで無限後退が阻止されます。
 ベアトリーチェはこれを切れません。
 切れなかったら敗北です。

 つまり、「赤字は真実とは限らない」が確定します。
 仮に「赤字は実は物理的絶対的な真実」だったとしても、ベアトの敗北が確定します。

 この戦法の強さは、「仮説を一切使用していない」という点にあります。
「~かもしれない」が入り込む余地が、ないのです。
 ということは、ベアトリーチェはこの戦法から、絶対に逃れられないのです。

 いや……ひとつだけ、逃れる手段がありました。
「妾はルールを守らぬ!」
 つまり、ダダをこねて負けを認めない。
 これでムリヤリ、戦人勝利を失効させる。これでゲームを続行させる……させたとしましょう。

 ところが、ベアトは以前、
「妾は約束を守る」
 と赤字で言っていますよね。
 つまり、「ルールを守らない」宣言をした瞬間、「赤字は真実とは限らない」が確定するのです。


 そう。
「赤字は真実とは限らない」のです。
 この魔法の言葉によって、全ての「赤字ロック」が解錠されます。
 すべての謎が、たったひとつの鍵で開きました。

 これが、「さいごのかぎ」。
「アバカムの呪文」。
 マスターキーよりも上位にある、「グランドマスターキー」です。


 この鍵さえあれば。
 全ての殺人事件が、人間による犯行可能だったことになります。
 戦人は、妹のもとへ帰れます。

 謎はありません。
 6本目のマスターキーで犯行に及んでもいい。隠し通路で出入りしてもいい。糸でかんぬきをかけてもいい。
 生きている人間にも、死んでいる人間にも、アリバイは一切なくなります。
 誰にでも犯行は可能です。


 え?

 じゃあ、犯人は誰なのですか。
 いろんな方法が考えられるうちの、どの方法で犯行に及んだのですか?


 その答えは、「不定」。
 つまり、決められません。
 どうして決めなければいけないのですか?
 戦人の勝利条件は、魔女を否定すること。すべての謎を人間犯行説で説明することです。
 それができました。
 それでOK。
「真犯人を当てる」とか「方法を見つける」とかは、魔女否定の手段にすぎません。手段と目的を混同してはいけない。目的を達成できるなら、方法は何でもいい。

 だって、「推理は可能か不可能か」って銘打った作品ですからね。
 この作品は、「犯行状況を調べ、殺害方法を特定し、それが可能だった人物を消去法であぶりだす」という方法では、犯人を見つけられないのです。
 そういうふうにできている作品なんです。
 そこが新しいんです。


 でも、そんなのキモチワルイじゃないか。
 勝ちは勝ちかもしれないけれど、真相がわからないなんて。
 誰がやったんだよ! どうやってやったんだよ!

 そんな声が聞こえてきそうですよね。


 それは。
 あなたが好きに決めたら良い。

 それを「自由」と呼ぶのです。


 我々はゲームを遊ぶとき、よく「自由度が高い」とか、「自由度が低い」とか、言うじゃないですか。
 このゲームは、最高に自由度が高いゲームなんです。それを楽しみましょう。


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