[さいごのかぎ]Townmemoryの研究ノート

創作物から得た着想を書き留めておくノートです。現在はTYPE-MOONを集中的に取り上げています。以前はうみねこのなく頃にを研究していました。

ep5初期推理その8・赤で語るプレイヤーと赤い竜

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ep5初期推理その8・赤で語るプレイヤーと赤い竜
 筆者-初出●Townmemory -(2009/08/27(Thu) 17:43:21)

 http://naderika.com/Cgi/mxisxi_index/link.cgi?bbs=u_No&mode=red&namber=31712&no=0 (ミラー
 Ep5当時に執筆されました]


●再掲にあたっての筆者注
 EP5を読み終えた、直後の考えを書き付けておくシリーズです。
 本文中の『「ルール」とは、何なのか』『「黄金の真実」という提案』の稿は、(このブログの)コメント欄に書いた内容を加筆修正のうえ再録したものです。

 ep5初期推理その1・俺男と僕男/逆トリック
 ep5初期推理その2・ノックス十戒と赤字への疑問
 ep5初期推理その3・新たな連続殺人者
 ep5初期推理その4・第一の晩
 ep5初期推理その5・第二の晩
 ep5初期推理その6・戦人の謎
 ep5初期推理その7・ノック問題
 ep5初期推理その8・赤で語るプレイヤーと赤い竜(当記事)

 以下が本文です。


     ☆


●赤で語るプレイヤー・ベルンカステル

 ep5を読んで、いちばんギョッとなったのは、古戸ヱリカの登場などではなく、
「ベルンカステルが勝手に条件設定を赤字で言う」
 ことでした。
 そんなことしていいんですか?

 ep4までのゲームは、
「ゲームマスターが現場の条件を赤字で設定し、プレイヤーが条件に抵触しない解答を見つける」
 というゲームでした。少なくとも、そういう建前でした。

 でも、ep5のゲームは、
「ゲームマスターとプレイヤーが現場の条件を赤字で設定しあい、プレイヤーが条件に抵触しない解答を見つける」
 というゲームになってます(ように見えます)。
 ものっすごいプレイヤー側に有利では? だって自分に都合の良い条件を赤で言ってしまえば良いのですから。

 大まかに分類して、
「ベルンカステルは実はプレイヤーではない」
 か、
「本当に、プレイヤーも条件設定を決めることができる」
 か、どちらかだと思います。

 前者の場合は、ベルンカステルはプレイヤーだと自分で言っているけれど、実は「副ゲームマスター」であって、ラムダデルタと一緒になってスジガキのあるお芝居をしていた。
 でもわたしは、後者を取ろうかなと思います。

 戦人が気付かなかっただけで、実は、そういうゲームなんじゃないのか、と。


●「ルール」とは、何なのか

 上記のことに関連して、
ep5初期推理その2 」で、ノックス十戒がとても疑わしいという話をしたのですが、その補足。
 ルールって、いったい、何なのだろう、というお話です。

 そもそも、ルールというのは、所与のものなのでしょうか。たとえば「ベアトリーチェのルールブック」といったもの(確定されたルール)があらかじめ存在し、ベアトもラムダも、それに従ってゲームを構成しているのでしょうか。

 わたしは、その考え方を採りません。
 ルールというのはすべて、提案され、合意されることで初めて有効になるものだと、わたしは理解しています。

 野球にはルールブックがあって、書店に売られていますが、あれはプレイヤー全員が、「ルールブックに従う」という暗黙の合意をしているから、初めてそこに権威があるのだと思うのです。ブックに権威があるのではなく、合意に権威があるのです。
 法律もそうで、新しい法律は、「この新法に従う」という社会的合意があって、初めて有効になります。

 麻雀や大富豪にはいくつか特殊ルールがありますが、それはゲーム前に「これとこれがアリ、これはナシ」と、あらかじめ合意を取るのが普通です。
 不合意のままゲームを進めて、「実はこのルールありだもんねー」と誰かが言ったら、ふつう抗議される(つまり対抗主張が生じる)はずです。

 戦人は、「固定されたルールが、ルールブックみたいにあらかじめ存在する」というふうに、どうも思いこんでいます。そのように思いこませたことが、トリックだと思うのです。
 そうではなく、このゲームのルールは、対話の中で、随時作り出されていく(成立していく)ものだと、わたしは仮説しています。
 というか、このゲームに限らず、すべての「ルール」は、本来的にそういうものじゃないでしょうか。

 戦人には、ルールが開示されていないのだから、戦人は(ゲーム開始時には)まだ、どのルールにも合意していなかったのです。
 いくつかの局面で、「こういうルールがあるんだもんねー」という意味のことを誰かが言い出したとしても、戦人が合意しない限り、無効です。
 あくまでも、相手が「そういうルール」を提案しただけのこと。
 ミモフタもない言い方をすれば、「そう言い張っただけ」です。

 でも、戦人はわりと素直で、「畜生、そうなのか……」みたいにするっと受け入れます。ep5では、戦人がプレイヤーでない・不在であることによって、いくつかのルール提案が素通しになりました。

 そこでベルンカステルなのですが、彼女は、
「このゲームはミステリーである」
「六軒島における現実は、ノックス十戒に従う」

 というルールを「提案」したのだと思うのです。

 ベアトリーチェのルールブックに、「このゲームはノックス十戒に従う」という条項があったかどうかはわかりません。でも、あってもなくても、どっちでも良かったのだと思うのです。
 ベルンカステル(あるいはドラノール)は、自分のターンの自分の行動を通じて、そういうルールを提案し、ラムダデルタに認めさせた。
 ラムダデルタはたぶん、なんか面白そうだからって理由でたわむれに合意してみちゃった。
 だからそれ以降、このゲームは、ノックス十戒に従うものとして進むようになった。金蔵の書斎に隠し扉があろうとなかろうと、「ない」ものとみなして話が進むことになった。

 そういうことだと思うのです。
 もし、ゲームマスターがベアトリーチェだったら、そんな提案はしりぞけたかもしれないし、マスターがラムダであっても、プレイヤーが戦人なら、それに疑問を抱けたかもしれない。


●「赤=幻想描写」

 さらにいうと、ベルンカステルは、
「古戸ヱリカは犯人ではない」「熊沢にはアリバイがある」といった「条件」を「提案」したのだと思うのです。ほんとの事実がどうかということとは無関係に。
 ラムダデルタは、その提案に「合意」した。
 だから、ほんとの事実かどうかには関わりなく、その「条件」のもとでゲームが進むことになった。

 だから、このゲームの実体は、ゲームマスターの出題をプレイヤーが解くというものではなく、
「一個の現象に対して、ゲームマスターとプレイヤーが、交互に干渉を与えあう」
 というもの、であるように思えるのです。

 極論すれば、この説ではベルンカステルは、「この部屋には隠し通路がある」という「条件」を赤字で言うことができます。そしてラムダデルタは、それを言わせてしまった場合、「隠し通路は(あったかもしれないが)使用できなかった」という条件を「再提案」しないかぎり、密室が暴かれたことになり、この局面はリザインになります。

(注:ただし「合意しない」とラムダが決めれば、ベルンは赤では言いきれない・途中でうぐっとなる、という考えです。戦人が明日夢から生まれたと言えなかったくだりは、ベアトリーチェが戦人の提案に「合意しなかった」からという考えです)


 それじゃベルンは何でもアリじゃないか、という感じがしそうですが、そうではないのです。
 ゲーム盤は、そうした「局面」が、3個、4個と連なっています。
 ベルンカステルは「局面」どうしを、矛盾させてはならない。それだと、一貫した推理として成立しないからです。逆にラムダデルタは、矛盾するように追い込んでやればいい。
 だからクイズではなく、まさに、チェス。

 そしてこれって、
「実際には犯人が刺したのだが、煉獄七姉妹がえぐったことにする」
 というのと、とても似ていないでしょうか。

「この部屋には隠し通路がある」と提案し認めさせるというのは、事実に対して幻想を上書きしているのと、相似ではないか。
「その隠し通路は使用不能だった」と再提案し認めさせるというのは、その幻想に対して幻想で反撃するようなものじゃないだろうか。
 ベアトリーチェとワルギリアの魔法大戦みたいに。

 つまり、赤字で何かを言う、というのは、現象に対する「幻想描写」ではないのか。
 そしてこのゲームって、「幻想と真実、どっちが勝つのか」ではなく、
「どっちの作り出した幻想のほうが強いのか決めようや」
 というバトルものなのではないでしょうか。

 そしてたとえば、いっぽうのプレイヤーが提案する幻想の内容が「きっと人間が殺したんだ」というものであっても、かまわないのです。戦人というのは、まさにそういう幻想を信じたいプレイヤーでした。


 そうだとすると、ep6以降で、
「赤を使えるベルンカステルと、赤を使える右代宮戦人の戦い」
 が発生してもかまわなくなります。発生しそうですよね。
 副ゲームマスター説だと、そのへんの整合が、ちょっと取りにくくなるんです。


●「黄金の真実」という提案

 ついでに思いついたので書きますと、「黄金の真実」も、そうだと思うんです。

 あれは、このゲームを「そういうゲームだ」と理解した戦人が、
「黄金の文字は真実を語るッ!」
 というルールを「提案」したのだと思うのです。

「カケラの領主のみが使用を許される黄金の真実というものがある」
 という条項が、ルールブックに記載されていたわけじゃないと思うのです。

 戦人は、金文字について、何も語っていません。ただ彼は黄色い字で言いたいことを言っただけです。
 金文字を最初に有効だと認めたのはドラノールで、次にラムダデルタでした。
 この2人は、「金文字の権威(真実性)」をまず認めた。つまり、「金文字は真実を語る」というルールに合意しました(ルールとしての成立)。

 そのあと、この2人はよってたかって、「これは領主の特権である」とか「時として赤字にまさる力を出す」とかいう解説を加えました。
 つまり、「黄色い字」という単なる現象に対して、設定という名の幻想描写を書き足してくれたのです。

 そもそも、ドラノールの言う、「この質問に限り、赤字による保証を禁ずる」が、不自然です。そんなことをして良いのか? そんな権限が存在するなら、事実上すべての裁判で、何が真実かをドラノールが決定できます。
 だから、まずこの禁止は、ドラノールが吹いてるだけで権威のあるものではない。

 その上で、何でそんなフカシをしたか。
 これは、「本当に戦人が、このゲームの真実に到達しているのだとしたら、必ず別の色の字を使って反論してくるはずだ」というテストだったんだ、とわたしは考えてます。

 ルールというのは、提案と合意によって、随時追加が可能である。
 真実は、提案と合意によって、随時上書きが可能である。


 この島の真実に到達したのなら、そのことを認識しているはずだ。認識しているなら、それを使用して(新ルールを導入するという方法によって)危機を脱することができるはずだ。
 そのテストへの合格を、ドラノールとラムダデルタは認めた。のだと思うのです。

 ラムダは戦人に、「これ以上の論述はヤボだから不要、戦人犯人説は詳しく聞くまでもなく成立していると認める」みたいなことを言いますが、これは、戦人の説をラムダが読み切ったという意味ではなく、
「真実を自らの手で作り出す、という境地に到達しているのなら、戦人犯人説は聞くまでもなく成立しているだろう。なぜなら真実を作り出せるのだから」
 という意味に理解しました。


●竜騎士07さんは何に合意したのか

 連想ついでに、邪推まがいのことを書きます。

 竜騎士07さんは、「既存のミステリのルールに従う」といった合意を宣言したことは一度もないのに、どうして雛見沢症候群や組織「東京」を出したことを非難されているのでしょう。謎です。


●シエスタ姉妹と赤い竜

 戦人は子供のころ、天のお月様にはうさぎの文明があると信じていたそうです。それを周囲にバカにされて、その彼の真実を捨てなければならなかった。

 ところで、シエスタの姉妹兵は、竜王ペンドラゴンが赤い竜の飛来を記念して結成した部隊だそうです。
 つまりこういう言い方ができそうなんです。「彼女たちは天界のうさぎである」。

 ベアトリーチェは(あるいはベアトリーチェの中の人は)、幼い戦人が抱くその幻想と、それを捨てなければならなかった悔しさの話を、本人から聞いたんじゃないかな。
 そして、彼が信じたかったけれど断念しなければならなかったことを、魔法でそっと、「真実」に変えてくれている……。

 そうなると、赤い竜というのは戦人のこと、という連想がはたらきます。彼のイメージカラーは赤です。赤い竜の飛来とは、6年ぶりに戦人が島にやって来たことを指す、と考えると、それっぽい。

 推理としては、ベアトの正体は幼い戦人からうさぎの話を聞けるような立場の人なんだなー、ということなんですが、それよりもわたしが「おぉ」と思ったのは、以下のようなことなんです。
 では、シエスタ姉妹は、ベアトと真里亞の間にさくたろうが共有されているように、ベアトリーチェと戦人が優しさによって共有した、共同幻想ということになる……。

 あえて表現を暴走させるなら、シエスタって、ベアトと戦人の間に生まれた娘たちみたいなものなんじゃないの……?

 そんなふうに考えると、ちょっとどきどきしますよね、ということをお話したところで、このシリーズはとりあえずこれで終わりです。


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